巴里レター No.29

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       ☆ 巴里レター No.29 ☆

 
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       ◇ モジリアニ展 ◇


 行ってきました。
 忘れていたわけではないんですけどね。
 リュクサンブール公園の一角にある美術館です。

 土曜の午後に行ったら、すご〜い行列。

 1時間待ちか、2時間待ちだなと思ったので、
 その日は素直に諦めました。
 並ぶ列が二つあって、ひとつは予約券を持ってる人の列なんだけど、
 ほとんど誰も並んでいないんだよね。

 あわてて予約券を買いに行ったのですが、すでに売り切れ。
 (あたりまえか。) 

 昔、グランパレで、ゴーギャン展をやったときも、
 4回くらい出かけていったけど、その度に、
 あまりの長蛇の列にくじけてしまって、
 『また今度にしよう。』と思っているうちに、終わってしまいました。

 そういう苦い経験があるので、
 『今回も、ちょっとヤバイかな。』と思いつつ、
 月曜日に、もう一度出かけていったのでした。

 列は土曜日に比べると短かったので、
 『30分くらいで入れるかな。』と思ったのですが、
 なんのなんの、予約券を持った人が来ると、
 そっちを優先的に入れるので、こっちは後まわし。
 『あともう少しだな。』と思ったころ、予約券を持った人たちが、
 怒涛のように押し寄せて来て、結局2時間待ったぜ。
 入る前に、すでに疲れてしまいました。

 入ったら入ったで、「ウ〜ン。」と唸るほどの混雑。
 そんなにまでして、見る価値があったのかというと、
 やっぱりあったんじゃないかな。
 『へえ〜。こんなに描いていたのか。』って、思うくらい数がありました。
 『酒飲んで、酔っ払ってただけじゃないんだ。』
 って、思ってしまいました。

 こんなふうに、一人の画家の絵をたくさん集めた展覧会に行くと、
 なんとなく、その画家のことがわかったような気になりますね。
 セザンヌ展に行ったときも、
 セザンヌのことがわかったような気になったし、
 マネ展のときもそうだった。
 (巴里は、絵の好きな人にとっては、いい街だよね。) 

       ∽     ∽     ∽

 モジリアニの作品は、やっぱり、そのほとんどが人物画でした。
 画集に載っていない、見たことのないような絵も結構ありました。

 彫刻がひとつ、風景画が二枚、デッサンがいくつかあったけど、
 そーゆーものは、なんの意味もないなって感じでしたね。

 今でこそ、『ああ、モジリアニだな。』って思うけど、
 当時の人たちは、やっぱり『なんだ、こりゃ。』って思ったでしょうね。
 ぜんぜん売れなかったみたいだし。

       ∽     ∽     ∽

 去年の夏、旅行したときに、
 ルルドの後、トゥルーズの方へ回りました。
 その近くにアルビという、ロートレックが生まれた町があります。

 そこで仕入れたエピソードをひとつ。

 巴里のモンマルトルの丘に、ラパンアジルっていうシャンソニエが
 あるんだけど、(今は観光客しか行かないみたいです。)
 ピカソとか、その辺に住んでた絵描きなんかが、
 しょっちゅう、そこで飲んでたそうです。

 あるとき、例によって飲んで騒いだ後、
 みんなが帰っってから、テーブルの下を見たら、
 モジリアニとロートレックが酔い潰れて、寝てたんだって。

 二人とも、三十代で死んじまったもんな。
 カナシイぜ。

 モジリアニは、絵描きとしてはプロじゃなかったんですね。
 もちろん、アマチュアのレベルを遥かに超えていたんだけど。
 プロでもなく、アマチュアでもなかった。
 やっぱり、芸術家だったんですね。

       ∽     ∽     ∽

 「Paul Guillaume」とか、
 「Leopold Zborowski」の肖像画って、
 わりと有名な絵なんだけど、モデルになった人の写真を見ると、
 ちゃんと似てるんだよね。
 『なんだ、似てるじゃないか。』って、思ってしまいました。
 絵だけ見ると、なんか冗談みたいな感じですが。

 絵はやっぱり、画集で見るより本物を見たほうが、
 ずっといいんだけど、モジリアニの絵はホントそうですね。
 肌の質感がゼンゼン違うもんね。
 横たわる裸婦の絵なんか、かなりエロチックですよ。
 警官に、「すぐに、はずせ。さもないと没収するぞ。」
 って言われたらしいけど、納得です。

 完成した作品と、未完成の作品のマチエールの感じが
 ぜんぜん違いますが、これはモジリアニが、
 仕上げ用のニスを10回くらい塗ってたらしくて、そのせいですね。
 ニスの使い方としては、スゴイ邪道なんだけど、
 でも彼の絵に良く合ってます。

 会場には、モジリアニの「自分は、人間に興味がある。」
 というような言葉が紹介されていました。
 でも、絵を見ていくうちに、
 『ほんとかな。意外と人間嫌いだったんじゃないかな。』
 って思ったりしました。

 でも、ジャンヌの絵は違うんだよね。
 ジャンヌというのは、彼の恋人であり、妻であった女性です。
 彼女をモデルにして、たくさん描いているけど、
 そのうちの何枚かは、他の絵と違って、
 丁寧に、「美人」に描いているんだよね。
 まあ、実際に美人だったみたいだけど。
 (モジリアニが描くと、みんな顔が細くなっちゃうみたいで、
  ジャンヌの絵もそうですね。)

 僕が、日本で学生やってたとき、
 友だちにシャガール好きなヤツがいて、
 画集を見せてくれて、
 「おい、この絵を見ろよ。シャガールは、この女の人が好きで好きで
  堪らなかったんぞ。オレには、それがよく解るんよ。」
 って言ってたけど、そのときは、解らなかったんですね。
 でも今なら、そいつの言ったことがよく解るのです。

 ジャンヌの絵を見て、そんなことを想い出しました。

      ∽     ∽     ∽

 モジリアニが死んだ翌日、ジャンヌは窓から身を投げて、
 死んでしまいました。
 そのとき、お腹には彼の子を宿していたそうです。

 そういう話を知っているから、
 最後のほうに、モジリアニの自画像とジャンヌの肖像画が
 並んでいるのを見たときは、やっぱり悲しかったですね。
 ちょっと泣きそうになったりして。

 モジリアニがモンパルナスに移って、住んでいた小さい通りも
 よく知ってるんですよ。
 「流れ星のホテル」って呼ばれてた安いホテルとか、
 画材屋とか、私立の美術学校があって、
 僕は、パリに来て2年目に、その学校に登録していたのです。
 あまり行かなかったけど。

 モジリアニが住んでた建物の入口のところには、
 彼のことを記念するプレートが、はまっています。

 モジリアニが、もし天国で、
 自分の絵を見るために、こんなに大勢の人が
 集まって来ているって知ったら、どう思うでしょうね。

 僕は、案外、「チッ」って舌打ちしてるんじゃないかな、
 って思っています。


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 【近ごろのパリ】

 コンコルド広場の近くの Jeu de Paume で、
 マグリット展をやってるみたいです。6月9日までだって。
 ここは、むかし印象派美術館だったのですが、
 絵をオルセーに移して、大改装が行われました。
 いまは主に、現代美術のエクスポジションに使われています。

 マグリット展ねえ。並ばなくてもいいなら、行ってもいいけど。
 やっぱり並んでいるみたいだし。
 ホントこっちの人は、絵が好きだよね。
 まあ、日本人もそうだと思うけど。

 マグリットの絵の面白さって、結局アイデアとか発想の面白さだと
 思うんですね。けっこう当りハズレがあったりして。

 でも、いまヒマだから、行くかもしれない。行かないかもしれない。
 よくわからない。要するに、気分しだいというコトでしょうか。
 
           2003年3月14日    Michio

 追伸

 前回、泣きマネをしたら、こころ優しい女性の方が数人、
 励ましのメールを送ってくれました。
 なかには、「遅くなったけど、」みたいな感じで、
 バレンタインのメールを送ってくれた方も。
 
 単純に喜んでいます。
 たまには、泣きマネをするのもイイかもしれない、
 って思ってしまいました。

 モジリアニの話が長くなってしまったので、
 「ルルド」は、お休みです。
 結果を先に書いておくと、
 やっぱり、マリア様は現れなかったんだけど、
 まあ、いいじゃないですか。
 「ルルド」を読んでくれてる、クリスチャンの人もいるみたいだし。

 モジリアニ展に関する補足的な文章と、
 シラク大統領が、テレビで国民に向けて語ったことなど、
 ホームページにUPしました。

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