巴里レター No.5

          §  巴里レター No.5  §
 

 今回と前回の大統領選挙は、ぜんぜん関係なかったのですが、
 前々回の大統領選挙のときは、というとフランスの大統領の任期は
 7年だったので( 今度から5年になるそうですが )、もう14年も
 前のことですね。えらい昔のような気がしますが、まあ、じっさい
 えらい昔なんでしょうが、ミッテランが勝ってシラクが負けたときですが、
 えーと、つまり何が言いたいのかというと、僕はその大統領選挙の日を 
 ひたすら待っていたのです。

 べつに、選挙権があったわけではなく、被選挙権があったわけでもない
 のですが、じつは恩赦がでるのを、ひたすら待っていたのです。

 こう書くと、なんだコイツは、なんか悪いことをして、オリのなかに入って
 いたのか、とか思った方もいるかもしれませんが、違うのです。

 フランスの大統領選挙のあとの恩赦というのは、なかなか素晴らしい
 もので、まあ、オリから出てくる人もいるでしょうが、なんと、駐車違反の
 罰金が全て帳消しになってしまうのです。ですから、車を持っている
 フランス国民は、皆この日を待ちこがれているのです。

 もしかしたら、スピード違反の罰金も帳消しになるのかもしれませんが、
 スピード違反では捕まったことはないので、僕にはわかりません。
 べつにスピード違反をしないで、安全運転をしているのかというと、
 そうではなくて、ごく普通にフランス人と同じように、スピード違反を
 しているのですが、日本と違って、スピード違反を取り締まる人が、
 とても少ないので、捕まらないだけなのです。

    ・・・  ・・・  ・・・  ・・・  ・・・

 フランスの大統領選挙は、アメリカと同じように直接投票ですから、
 罰金を帳消しにしないなんて言うと、切符切られて持ってる人は、
 誰も入れてくれませんから、いつまでも残る制度なのでしょう。
 ちなみに、始めたのはドゴールで、1965年だったとか。

 毎回、モラルが問題になるんですけどね。大統領選が近づくと、
 ムチャクチャなところに駐めてる車、よく見かけますから。
 でも、候補者は皆、
 「まあ、ずっと続いてきた慣習のようなものだから。」
 とかなんとか言って、笑ってごまかしたりしています。

 僕は、その当時、罰金がいくら溜まっていたかというと、
 なんと、日本円にして、20万円くらい溜まっていたのです。
 
 ヒドイ奴だ、と他人ごとのように書いておりますが。

 ときどき、思い出したように、通知は来ていたんですけどね。
 ※ 早く払いなさい。払わないと差し押さえに行きますよ。
 とか、なんとか。でもそんなの誰も気にしていませんでしたから。
 皆、ひたすら選挙が終わるのを待っていたのです。

 催促の通知が来ても、なんだ、また来たのか。また少し増えたな。ポイ   
 てなかんじでしたね。

 でも、大統領選挙まで、ついにあと1ヶ月だ、というときになって、
 【今度こそ、本当に差し押さえに行くぞ。】
 っていう通知が、3日続けて来ちゃったんです。

 これには、正直言って参りましたね。
 『 ヤバイなあ。ほんとに来るかなあ。今度は本気かもしれないぞ。』 
 って思って、ちょっとこわくなって、半分だけ払いました。はい。

 あとで、フランス人の知り合いに話したら、
 「 バカだなあ。なんで、そんなもん払うんだ。」
 アンタはアホか、みたいに言われてしまいました。
 
 結果的には、そいつの言ったことが正しかったみたいですが、
 僕は、そのとき思いましたね。
 『 そりゃ、アンタはいいよ。フランス人だから。
  万が一、差し押さえが来ても、ナンダカンダうまいこと言えば、
  許してもらえるかもしれないし、ナンダカンダ言ってるうちに、
  時間切れになって、恩赦がでるかもしれないもんね。
  
  でも、僕はフランス人じゃないからね。
  もし差し押さえが来て、ナンダカンダ言ったら、
  次の滞在許可証、更新できないかもしれないもんね。』

 罰金20万円も溜めておきながら、よく言うよ、って思った方も
 いるかもしれませんが。結局、半分払って半分帳消しになったので、
 なんだか得したような、損したような、複雑な気分でした。
 まあ、滞在許可証の更新も、問題なかったし、よかった、よかった。

 でも、いまあの頃のことを振り返ってみると、たとえ本当に差し押さえが 
 来たとしても、あんまりたいしたものなかったなあって、しみじみ
 思ったりしますね。( いまでも、あんまりたいしたものないなあって、
 しみじみ思ったりしますけど。)

 家具付きの部屋だったから、机とかタンスは僕のものじゃなかったし、 
 ラジカセはあったかなあ、テレビもあった。これは今でも使っているけど   
 帰国売りの14型のテレビです。帰国売りって、日本に帰る人が、
 家具とか、電化製品とか、安く売るんですね。1年くらいで帰る人もいて 
 わりと掘り出しものがあるんです。でも、テレビが今でもちゃんと
 映っているっていうのが、すごいなあ。ちなみにメーカーは、シャープで 
 Made in マレーシア って書いてあります。
 やっぱり電化製品は日本だよなあ。

 車も差し押さえの対象になったでしょうが、これも帰国売りで、
 あまり価値はなかったと思います。ボンネット少しへこってたし。
 へこませたのは、僕だけど。
 ちなみに、プジョー305っていう車でした。そのあと、しばらくして
 売っちゃったんだけど、20万円にもならなかったもんなあ。
 
 最近気がついたんだけど、刑事コロンボが乗ってるオンボロの車って、 
 プジョーじゃないかな。こっちでは、たまに夜遅く、テレビで刑事コロンボ
 やってたりします。もう何回も見たようなやつだけど。

 フランスって、車の維持費がけっこう高いから、とくに保険代とか
 修理費が高いんだけど。だから、買うよりは、必要なときだけレンタカー      
 借りたほうが安くつくと思って、いまは車持っていないのです。
 だから今回は、大統領選挙が近づいてきても、余裕ですね。

      ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・
 
 今回の巴里レター読んで、コイツ日本語がちょっとへんだ、とか、
 性格もちょっとへんじゃない、とか思われた方もいっらしゃるかも
 しれませんが、まあ、日本を出て19年ですからね、こんなもんです。

         2002年4月29日    Michio    
 
 追伸
 
 このレターが届くころには、フランスの大統領選挙も大詰めを
 迎えていることでしょう。第1回投票の結果には、びっくりしましたね。
 まさか、極右の候補が決戦投票に進むなんて、誰も思っていなかった
 ですからね。今回は、極右の候補が二人出て、合わせて19%くらいの
 得票率でした。極右の支持率がここまで伸びたのは、社会党政権の 
 もとで、治安がどんどん悪化したのが原因だと思います。

 フランス国民の4分の3(つまり75%)が、第1回投票の結果に不満で
 ある、というアンケート結果がでたそうですが、不満だっていったって、
 投票したのはあなたたちでしょう、って言ってやりたいですね。

 こういうときに、テレビカメラに向かって、よく言われるのが、
 「わたしは、恥かしい。」っていう言葉なんですね。
 なにが恥かしいのか、というと、「フランス人であることが恥かしい。」
 っていう意味なんですね。

 以前、ベルギーで大きな事件があったときにも、インタビューに答えて、
 「ベルギー人であることが、恥かしい。」って言ってた人がいましたから、 
 ヨーロッパでは、よく使われる言い回しなのかもしれません。
 ただ、普段の会話で、そういう言葉が出てくるかどうかっていうのは、
 ちょっと疑問ですが。 
 
 「わたしは、日本人であることが恥かしい。」 っていう言葉は、あまり
 聞かないですね。日本人は誇り高い民族なのでしょうか。それもあると
 思いますが、国際感覚が、ちょっと乏しいんじゃないかなっていうことも
 あるかもしれません。べつに日本人の悪口じゃなくて、客観的に考えて。 
 ( 誤解のないように書いておくと、僕は日本人大好きです。)
 ( もちろん、僕は日本人です。)

 でも万が一、極右の候補が大統領になっちゃったら、僕らみたいな
 ちゃらんぽらんな外国人は、すぐに追い出されてしまいそうですね。
 【 シラク、頑張れ!】

 それから、もうひとつ。前回の巴里レターで、フランス映画の邦題を
 「アメリー・プーラン」と書きましたが、どうやら日本では、
 「アメリ」というタイトルで公開されているみたいです。
 このまえのアカデミー賞では、5部門でノミネートされていたそうです。
 地方のほうは分かりませんが、東京では、まだやってるみたいですね。

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