巴里レター No.6


         §  巴里レター No.6  §

 こちらでは、5月1日のメーデーというのは、
 クリスマスとか、1月1日に匹敵するような、とても大事な祝日です。
 お店や美術館は、ほとんどお休み。
 むかしは、マクドナルドも休みでした。

 そして、あちこちで、労働組合などのデモが行われます。
 今年は、5月5日の大統領選挙の直前ということもあり、
 しかも、その決戦投票に、極右の候補が初めて進んだということで、
 かなり盛り上がったみたいです。

 コワイから、とても見に行こうという雰囲気じゃないんですね。
 とくに、極右のデモ、これがコワイ。
 やたらモノを壊したりするから、その通り道にあたるお店なんかは、
 みんなシャッター下ろしちゃうんだけど、1995年のデモのときなんか、
 誰かセーヌ川に投げ込まれて、その人死んじゃったもんね。
 ニュースで、そのときの犠牲者の顔写真、ちらっと映してたけど、
 やっぱり移民2世って感じの顔でした。髪の毛黒かったし。
 僕も、髪の毛黒いから、ヤベエぜ。

 その極右の政党、「国民戦線」ていうんだけど、
 ( 名前がすごいでしょ。主義主張もすごいけど。)ちゃんとした政党で、
 支持率も15〜20%ぐらいあるっていうんだから、
 やんなっちゃうよね。
 ( コワイから、あんまり悪口書かないでおこうっと。)

 この極右の人たち、
 ジャンヌダルクを、守護神みたいに思っているらしくて、
 デモのときも、ジャンヌダルクの銅像のところ、通るんですよ。
 また、ジャンヌダルクに扮した女の人が、
 銀ピカの鎧着て、馬に乗って、デモに加わったりしてるんだよね。

 このジャンヌダルクの銅像って、
 オペラ通りから、わりと近いところにあるんですよ。
 オペラ界隈って、日本人関係のお店とか、レストランが多いでしょ。
 だから、たいへんだよね。

 今回は、あまりたいしたことなかったみたいだけど、
 それでも、三越の前で、逃げたり追っかけたりしてるシーンが、
 テレビに映ってました。( どうして三越の前って、判ったかというと、
 シャッターの上に、三越って、漢字で大きく書いてあった。)

     ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・

 何年か前の話だけど、
 僕の友だちが、その極右のデモを、少し離れたところで、
 コワイなあって思いながら、見てたんだって。
 遠くのほうには、機動隊の人たちも、何人かいたんだって。
 
 デモが通り過ぎたあと、その機動隊の人たちが来たから、
 「 あっちへ行ったよ。」 って教えてあげたら、
 その人たちは、彼が指差したのとは、反対のほうへ行って、
 5、6人でかたまって、いつまでもナンダカンダ、ナンダカンダって、
 話し合いしてたんだって。
 
 その友だちは、
 「 やっぱり、機動隊の人たちもコワイんだよ。」 って言ってました。

 フランス人て、すごい現実主義者だから、
 ( カルロス・ゴーンを見ればわかるでしょ )
 おまわりさんだって、警察官であるまえに、一人の人間である、
 みたいな意識が強いんじゃないかな。だから、給料安いと思うと、
 警察官でも、消防士でも、みんなでデモやるもんね。

 そう、フランスって、やたらデモとかストライキが多いんですよ。
 とくに、ストライキがね、もう、いいかげんにしてくれって、
 言いたくなるときもあるんだけど、まあ、自分の国じゃないから、
 しょうがないけどね。

 今回もそうだけど、高校生も、ワアーってデモやるっていうのがね、
 どうも、僕の理解の範囲を超えているんだけど。
 彼等なんか、あんまりムズカシイこととか、
 大人社会のドロドロした部分とか、わからないだろうと思うけど、
 やっぱりワアーってやりたいんだろうね。( お祭り気分で )

    ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・

 もうひとつ似たような話を、きいたことがあります。
 これも少し古い話だけど、( 古い話が多いなあ )
 知り合いの知り合いの人が、フランス人の医者だったか、
 弁護士だったか、忘れたけど、車盗まれたんだって。
 BMWだったか、ゴルフGTi だったか、忘れたけど、
 そーゆー盗まれそうな車だったんだって。
 ボンネットへこったプジョーとは、違うんですよ。

 で、車盗まれてから、しばらくして、その人の家に、
 匿名の電話が掛かってきたんだって。
 「私は、あなたの車があるところを知っています。」 っていう、
 それだけで、ちょっとビビっちゃいそうな電話だったんだって。
 
 その電話してきた人が言うには、
 自分はアパートの管理人をやっているけれど、
 自分が管理している建物の地下に、その盗まれた車があるとか、
 でも、自分は絶対に関わり合いになりたくないとか。
 それで、名前も教えてくれなかったんだって。

 だから、その医者か弁護士の人は、警察に行って、事情を話して、 
 おまわりさん3人と一緒に、その建物に車を取りに行ったんだって。
 
 でも、一緒に行ったおまわりさんは、
 誰も、地下の駐車場に降りてくれないんだって。
 「 それは、私の仕事ではありません。」 とか言ったのかもしれない。
 ( フランス人て、なにかっていうと、すぐそういうコト言うんだけど )
 「 じゃあ、あんたたちの仕事は、いったい何なんだ。」
 って言ってやればいいのにね。
 ( 僕は、気が弱いから、絶対そういうこと言えないけど )

 その医者か弁護士の人も、コワイから、
 一人で地下に降りて行くなんてできないし、そこの管理人のひとも、
 ぜんぜんあてにならないし、だから困ってしまったらしいんだけど、
 ふと思いついて、友人のスゴイ強そうな人に頼んで、
 来てもらったんだって。

 で、そのスゴイ強そうな人と、二人で地下に降りていってみたら、
 さいわい悪党の人たちは居なくて、
 自分の車が、半分くらい分解されて、放置されていたんだって。
 悪党の人たちは、その車、バラバラにして、
 部品として売るつもりだったみたい。

 この話してくれた人が、しみじみ言ってました。
 「 フランスのケーサツって、ぜんぜんあてにならないよね。」 って。
 
    ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・

 あっ、もうひとつ、おまわりさんの話、思い出しました。
 
 日本人のひとが、あるとき、車を運転していたら、
 すごい渋滞にひっかかっちゃったんだって。
 ぜんぜん前に進まないから、しびれを切らして、
 Uターン禁止のところをUターンしたら、
 ちょうどそこを通りかかったパトカーと、ぶつかっちゃったんだって。

 なんか悪夢のような出来事だよね。
 運転してた人は、「 しまった!」 とか、「 なんてこった!」 とか、
 思いながら、顔面マッ青。

 で、どうなったかというと、
 パトカーから、おまわりさんがニコニコしながら降りて来て、
 こう言うんだって。
 「 いやあ、お互い、今日は運が悪かったねえ。」 だって。

 フランス人て、そういうユーモアのセンス持ってる人いるんですよ。
 そのおまわりさんとは、最後に、握手して別れたらしいけれど、
 しっかり罰金は取られたんだって。そういうお話です。

 今回は、極右とかフランス警察の悪口を書いたわけではないので、 
 関係者の方は、勘違いしないように。まあ、関係者は読まないか。
 関係者じゃない人は、告げ口しないように。よろしく。
 
          2002年5月12日   Michio      

 追伸
 
 大統領選挙、シラクが勝ってよかったよね。 
 シラク82%、極右の候補18%、ということで、
 極右の票があまり伸びなかったので、みんなホッとしたみたい。
 シラク支持のオバさんが、テレビカメラに向かって、
 「 私は、フランス人であることを、誇りに思います。」って、
 大きな声で、2回くらい言ってたから、ちょっと笑ってしまいました。

 あとは、6月の議会選挙だよね。
 シラクにとって、最悪のシナリオは、極右が伸びて、
 また、左派の巻き返しで、いままでみたいに議会の過半数を、
 左派に押さえられてしまうってことだろうね。
 逆に、極右が伸びずに、保守連合で過半数取ったら、
 きっと嬉しいだろうと思うよ。 

 とりあえず新しい内閣の顔ぶれも決まって、
 ( 6月の選挙で負けたら、すぐ解散だけど )
 首相は、いままで見たことも聞いたこともない、
 ラファランていう人です。
 いかにもシラクの忠実な子分て感じの人だけど。
 内務大臣は、パリ郊外の高級住宅街の市長で、
 エリート意識むきだしって感じの、サルコジって人です。
 この人、庶民にはウケないだろうなあ。
 ( 内務大臣が首相の次に偉いみたいです。)
 これで選挙に勝てるのかなあ。でも、日本の内閣に比べたら、
 ムニャムニャムニャ・・・・・。
 
 でも、フランスの政治家って、すごい優秀ですよ。超が付くくらい。
 とくに、外交的な寝ワザとか裏ワザとか、オソロシイくらい。
 ( フランス外交の内情を、知っているわけではありませんが )
 だから、国力に比べて、国際的な発言力とか影響力とかが、
 すごい大きいんだよね。
 消費税発明したのも、ジスカール・デスタンていう
 フランスの元大統領だし。

 EUの統合にしても、
 日本では、経済的な面ばかり強調されているみたいだけど、
 政治的なものの見方をしたら、これは凄いことだと思いますよ。

 たとえば、むかし東ドイツだった地域に、
 いまはもう、フランスからパスポートなしで行けるんですよ。
 みんな、あたりまえのことのように思っているけど。
 でも、日本から北朝鮮に、パスポートなしで行けるようになるには、
 いったい、あとどれくらいの歳月が必要なのでしょう。
 いったい、日本の首相が、あと何人変われば、いや何十人かな、
 とにかく、近い将来に、そういう日が来るとは思えないもんね。

 ちょっと長い追伸でした。
 
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